ギャンブルが原因の借金でも自己破産できる?
公開日:2021/04/22
更新日:2021/08/26
ギャンブルが原因の借金だけど,
自己破産できる?
ギャンブルが原因で借金を作られる方は
たくさんいらっしゃいます。
ギャンブルが原因で借金を作ってしまった!
こんな借金でも整理できるのかと
ご心配な方に向けて,コラムを作成致しました。
免責不許可事由
借金の整理の際
よく「自己破産する」と言われますが,
自己破産をする=借金を返さなくてよくなる
ということではないのです。
裁判所から破産開始決定を受けたあと,
裁判所から免責許可決定を受けて初めて
借金を返済する必要がなくなる
(通説では自然債務になる,強制執行力がなくなる)
とされています。
そのため
自己破産する場合は最終的に
免責許可決定をもらう
ということが目的となります。
しかし,
破産法252条1項各号には,
免責不許可事由というものが定められています。
すなわち,破産法252条1項各号に定められている事由がない限り,
免責は許可されることになっていますが,
破産法252条1項各号に定められている事由がある場合は
免責は不許可になる(借金を返さなければならない状態が続く)
ということなのです。
主な免責不許可事由としては
@債権者を害する目的でする財産の隠匿,損壊等
A破産手続の開始を遅延させる目的でする不利益処分等
B破産者の義務に属さない偏頗行為
C浪費,賭博その他の射幸行為による過大な債務負担等
D詐術による信用取引
E裁判所への説明義務違反
などがあります。
ここで,Cについて具体的に見ると
以下のとおりです。
「浪費」とは,破産者の地位,職業,収入及び財産状態に比して
通常の程度を越えた支出をすること
(東京高等裁判所平成16年2月9日判決参照)
とされており,
「賭博その他の射幸行為」には
競馬,パチンコなどのギャンブルなどのほか,
先物取引やFX取引などの投機的取引が含まれます。
もっとも,
これらの行為と著しい財産減少や過大な債務負担との間に
相当因果関係がない場合は
含まれません。
すなわち,このコラムで問題となるギャンブルが原因の借金は
C浪費,賭博その他の射幸行為による,過大な債務負担等
に該当します。
したがいまして,
ギャンブルが原因の借金は
免責不許可事由に該当しますので
せっかく自己破産しても
免責されない可能性がある
すなわち
借金を返済しなくてもよくならなくなる可能性がある
ということになるのです。
では,ギャンブルが原因の借金はもうどうにもならないのでしょうか?
裁量免責
しかし,実は
裁量免責(破産法252条2項)
という制度が認められています。
内容としては
免責不許可事由がある場合においても
一切の事情を考慮して免責を許可することが
相当な場合に該当する場合は
裁量免責される可能性があります。
裁量免責が認められるか否かの判断基準としては
ギャンブルなどがある場合は
ギャンブルなどに興じていた金額がどの程度か
ギャンブル行為を継続していた期間・時期等
は当然のこと
破産者が破産手続に誠実に協力したか否かや
他の免責不許可事由が存在するか,存在するとしてその程度など
が考慮されます。
また,破産者に説明義務違反があるかどうか,その程度
破産手続におぼした影響等も考慮されます。
ですので,過去は変えられませんが,
一旦破産しようと決意したのであれば
嘘を言わない,自分に不利なことも全部話す,
当たり前ですが,今後はギャンブルは一切止める
ことが重要となってきます。
裁量免責が認められた場合も
借金を返済しなくてもよくなる
ということになります。
免責してもよいかどうか観察される場合
以上が裁量免責のされる場合なのですが,
あまりにも免責不許可事由の程度が甚だしく
すぐに免責許可決定をすることができない場合があります。
そのような場合は,裁判所は,すぐに免責不許可とするのではなく,
免責してもよいかどうかしばらく様子を見てくれる場合があります。
そして,経過観察をした結果
免責許可決定をしてくれる場合もあります。
具体的な経過観察の方法としては
破産管財人が
破産者の家計を指導や監督して
破産者の意識の変化,家計管理能力を評価するものです。
その場合
破産管財人は,
破産者に対し,家計収支表の作成,家計簿の作成を指導し
破産者と定期的な面談を行って,生活状況を報告させ,
家計収支表などを提出させます。
また,破産者に
借金の一部の返済金として積み立てさせて,
借金を全部免責とするのではなく
一部弁済をさせようとする場合もあります。
このように
免責不許可事由に該当するからといって,
すぐに免責不許可とされるわけではありません。
ですので,
ギャンブルなどを行って免責不許可事由があるから破産できない・・・
と諦めるのではなく,
まずは,弁護士に相談して
対応策を検討するべきです。
裁量免責の実績
例えば,大阪地裁の実績が公表されているようですが,
免責不許可の割合は,毎年0.1%程度にとどまっているようです。
以上からすれば
ギャンブルが原因の借金であったとしても
諦めないで自己破産してみることが大切
となると思います。
その場合
上記でもご説明しましたが,
まずは,ご相談なさった弁護士に
不利なことも全部話す
ことが重要です。
借金でお困りの方は
安原法律事務所まで
ご連絡ください。