自己破産前に相続が発生した場合,どうなるの?
公開日:2021/05/27
自己破産する前にお父さんが亡くなってしまい,まだ遺産分割が済んでいない!
遺言書があったけど納得できない!
自己破産しようと思っていたけど,どうなるの?
このような点について
本コラムではご説明致します。
相続の発生と破産手続の関係
被相続人の死亡により,相続が開始します。
相続人は,相続の開始により,被相続人の財産の一切の権利義務を
承継することになります。
そして,相続人が複数人いる場合は
遺産分割が必要となります。
遺産分割が成立した場合に
相続開始の時に遡ってその効力が生じます。
そして,遺産分割が成立する前は
相続財産は共有となり,相続人に権利があることになるのです。
それでは自己破産する前に相続が開始した場合
遺産分割はどうなるのでしょうか?
破産者が相続財産に権利があるということになるので
債権者は,相続財産から,借金の回収を図ることができるのでしょうか?
具体的には,破産手続では,
相続財産があるので
同時廃止ではなく,破産管財人が選任されることになると思います。
そのため,破産管財人が
遺産分割に参加することができるのかが
問題となっているのです。
以前は,遺産分割調停に
破産管財人は参加できないとする運用もあったようですが
現在では,破産管財人は,遺産分割調停等に参加できるとされています。
そして,破産者は
遺産分割調停等にはもはや参加できないとされています。
自己破産前に遺産分割協議が成立していた場合
この場合は
破産手続開始決定時に
遺産分割協議書が作成されていない場合には
再度破産管財人の方で遺産分割を行う必要がある
と考えられています。
仮に破産者が破産手続開始決定前に
不利益な遺産分割協議をしていた場合は
破産管財人は否認権を行使することができる
と考えられています。
遺言があった場合
遺言がある場合
原則的には,遺言書の内容のとおり
相続がなされます。
しかし
遺言書の効力を争う場合があります。
まずそもそも遺留分侵害額請求ができるのかという問題があり
破産手続開始時に
遺言無効確認訴訟
遺留分侵害額請求訴訟
が提起されている場合があります。
遺言無効確認訴訟は
文字通り遺言の効力を争う訴訟であり,
遺留分侵害額請求は
遺言が法律上最低限保証されている遺留分を
侵害しているときに認められる権利です。
さすがに遺留分侵害額請求権の行使は
破産管財人が行うことができないと考えられていますが
遺言無効確認訴訟
遺留分侵害額請求訴訟
いずれにおいても
破産管財人は,当事者適格があると考えられており
破産手続開始時に訴訟が係属していた場合には
破産管財人が訴訟を受継することができる
と考えられています。
以上が破産手続開始前に
相続が発生していた場合の
法律関係です。
最後に
岡山で借金に悩まれている方は
ぜひ安原法律事務所まで
ご相談ください。