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自己破産の直前に離婚した場合の慰謝料・財産分与・養育費

 

 

 

公開日:2021/05/28

 

離婚した途端に元夫が自己破産した!
慰謝料や財産分与を既に受け取っているけど大丈夫?
決まっていた慰謝料・財産分与・養育費の支払いはどうなるの?

 

このような疑問を持たれている方に
本コラムでは
離婚と自己破産の関わりについてご説明させていただきます。

 

否認権の行使

 

否認権とは,
自己破産直前に破産者が行った財産の処分行為や弁済について
否認して(すなわち効力を否定して)
散逸した財産を破産者の財産に取り戻すことです。

 

具体的な要件については以下において説明しています。

 

 

ここで,簡単にご説明すると
類型としては
@ 詐害行為の否認
A 偏頗行為の否認
があります。

破産者が行う財産分与

 

それでは,具体例でご説明しましょう。

 

離婚の約1か月前に事業が倒産したが
実質的に唯一の財産である不動産を
元妻に財産分与として名義を変更した
という事案がありました。

 

この事案では,
事業が倒産して
元夫は,債務超過かつ支払不能となっていた事案であり
元妻もそのことは知っていたと推定される事案でした。

 

しかし,最高裁判所の判例では
以下のように指摘して
詐害行為とはならないとされたのです。

 

離婚に伴う財産分与は,
民法766条3項の規定の趣旨に反して
不相当に過大であり,
財産分与に仮託してされた財産処分である
と認められるに足りるような特段の事情がない限り,
詐害行為とはならない

 

最高裁判所は
上記事案は,
元妻の離婚後の生活設計の見通しが立てることが難しい事案であったため
財産分与は,離婚後における相手方の生活の維持に資するためのもの
という考え方を採用し
否認権の行使の対象とはならないと判断したのです。

 

一方,
再婚まで毎月10万円支払うという扶養的財産分与の合意が
不相当に過大であるとされた事案もあります。

 

結局のところ
当該離婚の相当な財産分与の額
元妻の経済状態
財産分与が実質的な財産逃れではないのか
などが検討されているものと考えます。

 

ただし,財産分与の支払義務は,
自己破産後の免責許可決定により
免責される可能性があります。

破産者が支払う慰謝料

 

それでは慰謝料はどうなるでしょうか?

 

この点についても最高裁判所の判示があります。

 

離婚に伴う慰謝料を支払う旨の合意は
発生した損害賠償債務の存在を確認し,
賠償額を確定して
その支払いを約する行為であって,
新たに創設的に債務を負担するものとはいえないから,
詐害行為とはならない。
しかしながら,
負担すべき損害賠償債務の額を超えた部分については
慰謝料支払の名を借りた金銭の贈与契約
ないし対価を欠いた新たな債務負担行為というべきであるから
詐害行為取消権の対象となり得る

 

と判示されています。

 

要するに,慰謝料支払の合意についていえば
妥当な金額の慰謝料ならば良いが
妥当な金額を超える部分は
否認の対象となるということです。

 

また,自己破産前に実際に支払われた慰謝料は
妥当な金額であっても
偏頗行為として否認の対象となると考えられています。

 

ですので
自己破産前に離婚して慰謝料を受け取る場合は
妥当な金額であったとしても
偏頗行為として否認される可能性があります。

 

否認されてしまった場合は
せっかく受領した慰謝料も
返さなくてはならないということになります。

 

また,元夫に慰謝料を支払ってもらうという約束をしていた場合
自己破産した後に払ってもらえるのでしょうか?

 

これは,元夫が自己破産して免責許可決定を受けた場合には
離婚に伴う慰謝料については免責されることになります。

 

そのため,元夫は,慰謝料を支払わなくてもよくなります。

養育費について

 

まず,養育費については
非免責債権であり,免責されませんから
元夫の支払義務がなくなることはありません。

 

それでは,自己破産前に
受け取っていた過去の養育費はどうなるでしょうか?

 

これは,不相当に多額であったり
巨額となっていない限り
否認権の対象とはならないと考えられています。

 

では,一括で将来の養育費の前払いを受け取っていた場合は
どうなるでしょうか?

 

これは,上記のとおり
将来にわたる養育費については,
免責の対象とならず
破産者は,自己破産後に取得した財産で支払われるべきもの
と考えられていますので
否認権の対象となると考えられています。

支払ってもらう側が自己破産した場合

 

この場合は,合意や判決等により
慰謝料,財産分与,一括前払いの養育費
いずれも金額が定まっていた場合は
破産財団に属することになります。

 

なお,破産財団に属するということは
その管理処分権が破産管財人に帰属するということであり
破産者は,自由に処分することができなくなります。

 

自己破産前に既に受領していた場合
その預金も,自由財産拡張が認められない限り,
破産財団になるということになります。

 

したがいまして,破産者は,
自由に費消することができなくなりますので
ご注意下さい。

最後に

 

以上が自己破産する前に離婚した場合の
法律関係のご説明になります。

 

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