代償分割〜相続財産が自宅不動産しかない場合〜
2019/08/08
相続財産は,
死亡した母と一緒に住んでいた自宅不動産しかない!!
このままずっと自宅不動産に住み続けたいので
自宅不動産を相続したいけど
弟との遺産分割をどうすればいい?
このような場合は,
代償分割という方法で
遺産分割ができないか
検討しましょう。
代償分割とは?
代償分割とは
共同相続人のうちの
一部の相続人に法定相続分を越える額の遺産を取得させ
他の共同相続人に対しては
その代償として
債務を負担させる
(すなわち代償金を支払わせる)
という遺産分割の方法です。
わかりやすくご説明すると
ある相続人は,自宅不動産を取得する代わりに
他の相続人に対し,代償金を支払う
といった遺産分割の方法です。
遺産分割の方法としては,
一番に,「現物分割」
(この不動産はこの相続人に,
この預貯金はこの相続人に・・・
といった個々の財産をそれぞれの相続人に取得させる方法)
をすべきであるとされているのですが
それが無理な場合は
「代償分割」
が認められることがあります。
しかし,どのようなときでも
誰かが希望すれば
代償分割になるわけではありません。
家事審判法195条は
「特別な事情」がある場合に限って
現物分割に代えることができる
とされているにすぎません。
特別な事情とは?
この「特別な事情」とは
以下の事情がある場合と考えられています。
一つ目は,現物分割が不可能な場合
すなわち,相続財産が自宅不動産しかない!
という場合が具体例として挙げられます。
二つ目は,現物分割が不可能ではないとしても
現物分割によってその財産の経済的価値を
著しく減少させる場合
三つ目は,その相続人にその財産を取得させることが
相当である事情がある場合
相続財産である自宅不動産にもとから
ずっと継続して居住してきたなどの場合は
その相続人の利用状態を保護した方がいいよね
という価値観になっています。
四つ目は,共同相続人間で
代償分割することについて
争いがないこと
を要件とするべきだとの考え方もありますが
この点は,
絶対必要というわけではなく
あまり厳しい要件にはなっていません。
最後に,これが一番大事な要件ですが
代償金の支払能力があること
という要件が必要となっています。
支払能力
それでは支払能力について
お話ししていきますね。
支払能力とは
代償金を支払う者が
本当に代償金を支払うことができる能力
ということです。
最高裁判所は
裁判所が代償分割を命じるときには
代償金を支払う者の支払能力についても
きちんと審理すべきだ
と言っているのです(最高裁判所平成12年9月7日決定)。
不動産などを取得させる代わりに
代償金を支払わせる場合
代償金はかなり高額になる場合もあります。
代償金は,
相続人間の公平の見地などから
即時に支払われなければならないのが原則
とされています。
ですから
代償金を支払えるかどうか分からない人間に
法定相続分を越える遺産を相続させて
あとの相続人は,払ってもらえるかどうか分からないけど
勝手に代償金を取り立ててね
というのは
あまりにも
不公平ですし
無責任ですよね。
そういった理由から
裁判所が代償分割を命じるときには
支払能力についての審理が必要とされているのです。
具体的には
銀行支店長名義の融資証明書
預金の残高証明書
預金通帳の写し
などの提出が必要になってきたりします。
遺産を取得する相続人が
自分名義の不動産を売却して資金を調達する場合は
買主の買付証明書
なども支払能力を立証する証拠になります。
代償金を分割にすることは無理なのか?
この点は,
分割払いにすることは一切駄目
といっている裁判例もあるのですが
多くの裁判例は
事情によっては
分割払いや期限の猶予も
認めることが可能であるとしています。
ただし,分割払いや支払猶予が
認められる場合は
単に一括払いができない
という理由のみでは足りないと理解されており
特別の事情がある場合に限られる
と考えられています。
なお,分割払いや期限の猶予が認められる場合は
利息などがつくこともあります。
その点はご留意ください。
最後に
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