被相続人が経営する会社へ資金援助した場合,寄与分は認められるか
公開日:2019/12/28
お父さんが経営していた会社へ資金援助していたんだけど・・・
それは相続の際に,考慮されるのかしら?
そのような疑問をお感じになってらっしゃる
遺産相続問題にお悩みの方
遺産分割にお悩みの方
このコラムでは
被相続人が経営する会社へ資金援助した場合に
寄与分として認められるか
という問題について
ご説明いたします。
寄与分とは
寄与分とは
共同相続人の中に,被相続人の財産の維持または増加に
特別の寄与(通常期待される程度を越える貢献)
をした者があるときは
遺産分割の際に寄与分を考慮して
共同相続人間の公平を図る制度です(民法904条の2)。
一般的な寄与についての詳しい説明は,下記コラムでご確認下さい。
そしてここで問題となるのは
民法904条の2第1項が規定する
特別の寄与の対象が
「被相続人の事業」に対してなのですが
この「事業」は
農業,漁業,商業等
中小の個人経営の事業と考えられているところ
被相続人の経営する会社は
被相続人とは別個の法人格でありますから
そもそも「被相続人」ではないし
「事業」ともいえない
ということなのです。
ですので
原則論から言うと
被相続人が経営する会社に対し
資金援助しても
被相続人に対する寄与とは
認められないということになります。
被相続人が経営する会社への資金援助が寄与分に該当するための要件
しかし
この点について
高松高裁平成8年10月4日決定は
被相続人が経営する会社への資金援助が
寄与分に該当するための要件
を判示しました。
具体的には
「被相続人は会社から生活の糧を得ており
自己の資金のほとんどを
会社の事業資金の担保に供し
被相続人から恒常的に
会社に資金援助がなされ
また会社の資金が被相続人に流用されたりしている。
これらの事情に照らせば
会社は被相続人の個人企業に近い面もあり
またその経営基盤の主要な部分を
被相続人の個人資産に
負っていたものであって,
被相続人がその個人資産を失えば
会社の経営は危機に陥り
他方会社が倒産すれば
被相続人は
生活の手段を失うばかりでなく,
担保に供している個人資産も失うという関係にあり
会社と被相続人とは
経済的に極めて密着した関係にあったものである。
そうすると
会社の経営状態,被相続人の資産状況,
援助と態様等からみて
会社への援助と被相続人の資産の確保との間に
明確な関連性がある場合には
被相続人に対する寄与
と認める余地があるということができる。」
と判示されています。
要するに
被相続人と会社が
経済的に一心同体にあり
会社の経営を守ることが
被相続人の財産の維持に
必要不可欠な場合
といえるでしょう。
無償性
とはいえ
寄与と評価されるためには
原則として無償
のものではなくてはならないとされています。
例えば
会社に対し資金を貸し付けた場合は
相続人は会社に対し
貸金債権
を有することになり
会社から返済を受けることができます。
この場合は
無償とはなりません。
もっとも
会社の資産状態から
相続人が貸金を全額回収することが難しい場合など
支出した金額と対価として得た実際の価値との間で
差が発生している場合は
無償性が認められる場合もあります。
最後に
以上のとおり
被相続人が経営する会社へ資金援助した場合
寄与分として評価されるかについては
原則的には認められないが
要件に合致する場合は
例外的に認められる
ということになります。
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