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遺留分侵害額請求(旧法の呼称は遺留分減殺請求)〜遺言の不公平を修正する制度〜

2019/07/08

 

 

 

 

お父さんが財産全部をお兄ちゃんに相続させるという遺言が残っていた!
お母さんは,私にはほとんど財産を遺さない遺言書を書いていた!

 

被相続人の方が死亡して,遺言書が残っていたが
その遺言の内容は,あまりにも不公平ではないか
とお感じになる場合は
どうしたらよいのでしょうか。

 

その場合は,
遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)
を行使することが考えられます。

 

ここで,遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)としている理由は
平成30年に相続法が改正され
名前が変更になったから括弧書きで記載しました。

 

具体的には,
令和元年(2019年)7月1日より前に相続が開始した場合
すなわち従前は,
「遺留分減殺請求」
と呼ばれていたものが
令和元年(2019年)7月1日以降に相続が開始した場合は
「遺留分侵害額請求」
と呼ばれることになりました。

 

令和元年(2019年)7月1日より前に相続が開始した場合は
従前の遺留分減殺請求になりますので
二つの違いにも触れながら
情報を提供して参りたいと考えております。

遺留分とは

 

遺留分制度とは,
被相続人の意思によっても
一定の範囲の相続人に対しては
相続財産の一定の部分を侵害することができない
とする制度です。

 

具体的には,
直系尊属(親や祖父祖母など上に行く場合)だけが相続人である場合は,
被相続人の財産の3分の1,
それ以外の場合は(配偶者がいたり子どもだけの場合など),
被相続人の財産の2分の1
については,
被相続人は,遺言によっても
相続人が相続するべき金額を侵害することはできない
とする制度です。

 

なお,兄弟姉妹は,遺留分権利者ではないとされています。

 

もう少し個別的に遺留分がどれくらいになるかとご説明すると
例えば,
被相続人に配偶者と子どもが2人いた場合,
配偶者の遺留分は,法定相続分2分の1×2分の1=4分の1
各子どもの遺留分は,法定相続分4分の1×2分の1=8分の1
となります。

 

ですので,
遺言により
一人の人に対し相続財産全てを相続させるとしたり
ほとんどの財産を一人の人に相続させるなどとしたり
しても
兄弟姉妹以外の相続人は,
遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)
をして,
不公平を修正することができます。

 

これから遺言書を作成したいとお考えの方は,
この遺留分に配慮していないと
自分が考えていた内容を実現することはできなくなり,
自分が多くを渡したいと考えていた人に
かえって迷惑をかけるかもしれません

遺留分侵害額の計算方法

 

遺留分侵害額を計算するためには,
単純に死亡時の相続財産を基礎として計算するわけではなく,
相続人が被相続人から生前贈与を受けた額(特別受益)や
被相続人の債務(借金)などを
考慮して
遺留分を算定するための基礎となる財産を計算します。

 

特別受益や引き継いで支払った債務(借金)などを考慮しないと
別の意味で不公平になってしまうからです。

 

ここで
遺留分を算定するための基礎となる財産にて
考慮される相続人に対する生前贈与については
平成30年相続法改正前は
時期を問わず全ての生前贈与が考慮されるとされていましたが
平成30年相続法改正により
原則10年以内のものに限定されました。

 

これは,相続人ではない第三者が財産を受け取る場合に
第三者の不利益に配慮したものです。

 

具体的には,

 

遺留分を算定するための財産の価額
   =相続開始時の被相続人の積極財産の額
     +相続人に対する原則10年以内の生前贈与の額
     +第三者に対する原則1年以内の生前贈与の額
     −被相続人の債務の額

 

となり,

 

遺留分=遺留分を算定するための財産の価額
×2分の1(直系尊属だけの場合は3分の1)
×遺留分権利者の法定相続分

 

となります。

 

そして,遺留分侵害額の計算は,次のとおりとなります。

 

遺留分侵害額=遺留分−遺留分権利者の特別受益の額(時期を問わない)
−遺留分権利者が遺産分割において取得すべき財産の価額
+遺留分権利者が相続によって負担する債務の額

 

となります。

 

結構複雑な計算になりますので,
弁護士にご相談なさった方がよろしいかと存じます.。

遺留分侵害額の計算に寄与分は考慮しないのか?

 

ここで,
遺留分減殺請求の被告となった方は,
自分は被相続人の事業に無償で貢献したのに考慮してくれないの?
自分は被相続人を介護したのに考慮してくれないの?
と,いわゆる寄与分の主張ができないのかと
お考えになります。

 

しかし,
遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)では
寄与分は考慮しない
ということになっています。

 

そのため,
悔しい思いをなさる方は多くいらっしゃいます。

遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)の行使の方法

 

遺留分権利者は,
相続の開始及び遺留分を侵害する贈与または遺贈
があったことを知ったときから
1年以内に
遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)を
行使しなければなりません。

 

そして,相続の開始及び遺留分を侵害する贈与または遺贈を
知らなくても
10年が経過すると行使することができなくなります。

 

行使の時点では,
必ずしも金額を明示しなくてもよいと考えられています。

 

また,遺言の効力を争うときも
この規定は適用になります。

 

すなわち,遺言無効確認訴訟を提起して
敗訴した場合も
この期間の制限は,
相続の開始及び遺留分を侵害する贈与または遺贈
があったことを知ったときから
1年以内に遺留分減殺請求を行使しておかなくてはいけなかった
ということになります。

 

ですので,遺言の効力を争う場合も
必ず1年以内に遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)はしておきましょう。

 

方法としては,取り急ぎとしては
内容証明郵便を使いましょう。

 

遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)をしたらどうなるの?

 

遺留分減殺請求は,従前は
物権的請求権とされていました。

 

すなわち,
遺留分減殺請求をすると
具体的に計算された割合により,
不動産の所有権等の権利を取得する
ことになると考えられていたのです。

 

ですので,
遺留分減殺請求をされた場合は
遺産につき共有関係が生じ,
その共有関係の解消には
別の裁判である共有物分割訴訟が必要とされていました。

 

現在でも
令和元年(2019年)7月1日より前に発生した相続では
最終的には
共有物分割訴訟が必要となります。

 

確かに,途中で和解をした場合や価格弁償が認められた場合などは
遡って共有ではなかった
ということになりますが
権利関係が決まるまで
株式権の行使など
不都合が生じていたのです。

 

また,遺留分減殺請求が一度行使されると
遺留分減殺請求により発生した目的物の返還請求権は
消滅時効にもかからない
ということになりました。

 

そのため
遺留分減殺請求を受けた人間は
非常に不安定な地位に置かれていました。

 

しかし,平成30年相続法改正により
遺留分権利者の権利行使によって生ずるのは
金銭債権とされました。

 

そのため,
遺産が共有状態になることもなくなりますし
権利行使が令和2年(2020年)4月1日より前の場合は10年間
権利行使が令和2年(2020年)4月1日以降の場合は5年間
で消滅時効にかかることになります。

 

このように
遺留分減殺請求は
平成30年相続法改正により
遺留分侵害額請求として
見直されることになったのです。

最後に

 

以上のように
遺言の不公平を修正する手段としては
遺留分減殺請求または遺留分侵害額請求
があります。

 

法律が改正されたばかりなので
適用が旧法になる場合と新法になる場合とで
結論が異なることになります。

 

どちらにしても
複雑な計算が必要となりますので
弁護士にご相談なさった方がよろしいかと存じます。

 

 

 

 

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