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遺産分割前に遺産を処分したらどうなる?

2019/06/13

 

お兄ちゃんが亡くなったお父さんの預貯金を勝手に払い戻した!

 

令和元年7月1日以降,
共同相続人は,預貯金のうち一定の金額を
民法909条の2により適法に払い戻すことができるようになり,
その場合には,払い戻した相続人が払い戻した預貯金を
遺産の一部分割により取得したとみなされるという扱いにして
遺産分割時に精算されることになりました。

 

それでは,
民法909条の2によらずに
違法に預貯金を払い戻したり
不動産など遺産を処分したら
どのように解決されるのでしょうか。

 

このコラムでは,
被相続人の死亡後,
遺産分割前に遺産が処分されたらどうなるのか
についてご説明いたします。

 

民法906条の2

 

この場合は,民法906条の2が適用されます。

 

内容としては,
遺産分割前に遺産が処分されても
共同相続人全員の同意がある場合は
その処分された財産が遺産分割時に
遺産として存在するものとみなすことができる
という内容です。

 

そして,処分した人間が共同相続人の一人であった場合は
その者の同意は不要
ということになっています。

 

すなわち,
遺産を処分した相続人以外の相続人全員の同意があれば
処分された遺産も含めて
遺産分割をすることができる
ということになります。

 

皆様方からすると
当たり前のようですが,
この規定ができる前は
大体の場合,各相続人は,処分をした相続人に対して
遺産分割の調停や審判とは別に訴訟を提起して
不当利得返還請求または不法行為に基づく損害賠償請求
をしなくてはいけなくなっていたのです。

 

そのため,
面倒,
処分をした全額ではなく法定相続分の一部しか請求できないため
処分をした者が得をする
と不評でした。

 

そこで,平成30年相続法改正により
民法906条の2が新設されたのです。

 

ちなみに,民法906条の2は,
相続人ではない第三者が遺産を処分した場合も
適用になりますが,
第三者は,遺産分割の当事者ではありませんので,
やはり不当利得返還請求又は不法行為に基づく損害賠償請求
を訴訟提起して行う必要があります。

 

なお,この民法906条の2は
全遺産が処分された場合には
適用にならないと考えられています。

 

あくまで一部が処分された場合に
適用になります。

具体例

 

具体例としては,
例えば,相続人が長男,次男,三男と3人いる場合を
考えてみてください。

 

次男と三男が
「長男が預貯金の一部を払い戻したから,
払い戻した預貯金を遺産分割の対象として欲しい」
といえば,
たとえ長男が
「払い戻した預貯金は葬式費用として使ったから
みんなで負担すべきだ,
遺産分割の対象とすべきではない」
と主張したとしても,
長男が払い戻した金額は
遺産分割の対象となって精算されます。

 

長男としては
次男と三男に対し逆に訴訟を提起することも考えられますが
葬式費用は喪主の負担である
と考えられていることから
長男の請求が認められるかどうかは分かりません。

 

ですので,
民法909条の2の手続に則らずに
預貯金を引き出すときは
既に遺産分割によりその引き出した預貯金額を取得した
と扱われる場合がございますので
お気を付け下さい。

 

なお,仮に次男が
遺産分割の対象とすべきと主張していたとしても
三男が
遺産分割の対象とすべきではないと主張していれば
次男は,訴訟を提起する必要があります。

 

これは,誰が預貯金を引き出したのかについて
争いがない場合ですが,
上記の具体例で,
長男が自分は預貯金を引き出していないと主張している場合には
家庭裁判所の遺産分割の調停または審判ではなく
地方裁判所に対し
長男が預貯金を引き出し
次男と三男は遺産分割の対象にすることに同意したから
引き出された預貯金は遺産分割の対象になるんだ
という遺産の範囲確認訴訟(民事訴訟)を提起するべき
と考えられています。

 

最後に

 

これは,あくまで
被相続人の死亡後,遺産分割前に
遺産が処分された場合の解決法です。

 

被相続人が死亡する前に
勝手に被相続人の財産を処分した場合は
また別の話になります。

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