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無効な遺言は相続において無意味になるのか?〜死因贈与への転換〜

公開日:2019/12/20

 

 

 

お父さんがせっかく遺言書を作ってくれていたけど
明らかに方式違背で無効だわ〜
無効な遺言って,相続において
無意味になるの?

 

このような疑問をお感じになってらっしゃる
遺産相続でお悩みの方
遺産分割でお困りの方
このコラムをご覧下さい。

 

このコラムでは
無効な遺言は無意味になるのか?
という内容について
説明しております。

遺言が無効になる場合

 

遺言には
遺言者が自分で作成する自筆証書遺言
公証人に作成してもらう公正証書遺言
などがありますが
自筆証書遺言も公正証書遺言も
いろいろ厳しい方式が定められており
方式違背がある場合については
遺言は無効
と定められています。

 

例えば
自筆証書遺言で押印を忘れたなどの場合
遺言の効力は無効となってしまうのです。

 

自筆証書遺言の詳細な方式については
下記のコラムをご覧下さい。

 

 

どちらにしても
遺言が有効となるためには
厳しい方式を遵守している必要があり
少しでも
方式違背があると
無効となってしまうのです。

 

遺言が無効となってしまった場合は
遺言は当然効力を有さないことになるので
遺言の内容は実現できない
ということになります。

 

しかし
せっかく遺言者が
遺言を残してくれているのにもかかわらず
遺言が無効の場合は
その遺言は何の意味も持たない
何の役にも立たない
として
通常の遺産分割をしなければならない
とすると
遺言者の意向は反映できない
ということになります。

 

その場合
無効な遺言の内容を実現するために
無効な遺言を死因贈与へ転換できないか
といった法的論点があります。

死因贈与とは?〜遺言との違い〜

 

死因贈与とは
贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与
のことであり
贈与者と受贈者の契約になります。

 

贈与者の死後に
効力が発生するため
相続対策として
活用することができる
と考えられています。

 

すなわち
死因贈与と遺言(遺贈)は
自分の死亡を原因として
財産処分を行う法律行為である
という点は同じです。

 

そのため
死因贈与には
遺贈に関する規定が準用される
とされています(民法554条)。

 

一方,死因贈与と遺言の異なる点は
たくさんあるのですが
一番大きな異なる点は
上記のとおり
死因贈与は贈与者と受贈者の契約であるが
(すなわち両当事者が行わなくてはいけない)
遺言は遺言者のみで行うことができる単独行為である
と解されている点です。

 

そのため
遺言は法定の方式に従って作成しなければならない
とされていますが
死因贈与には
方式に関する遺贈の規定は準用されない
すなわち
方式の定めはないとされているのです。

 

以上のような違いがあるため
死因贈与は
遺言が無効となる場合に
その無効な遺言を救済するため
利用されることがあるのです。

死因贈与への転換が認められる場合

 

上記のとおり
死因贈与は,
両当事者の契約ですから
遺言者の生前に
両当事者の意思の合致が必要です。

 

ですから
遺言者(被相続人)は
受贈者に対し
自分の死後に贈与することを申し込んだ
と評価される必要があり
受贈者については
その申込みに対し承諾があった
と言える必要があるのです。

 

そのため
少なくとも
遺言者は,受贈者に対し
遺言の内容を知らせている必要があり
受贈者は
遺言の内容を認識し受容している必要があります。

 

例えば
遺言者が第三者に対し遺言の保管を依頼し
受贈者が遺言の内容を知ったのは遺言者の死後
などといった事情がある場合は
死因贈与の成立は否定されていますが
遺言者が遺言を作成後,
すぐに受贈者に対し遺言書を交付し
受贈者がそれを認識したような場合には
死因贈与の成立は認められる傾向にあります。

 

以上のとおり
無効な遺言でも
死因贈与の成立が認められた場合は
通常の遺産分割ではなく
遺言者の意思を反映させて
遺言の内容を実現させることができます。

 

ですから
遺言を作成しておくことは
無駄とはならないのです。

最後に

 

以上のとおり
無効の遺言でも
死因贈与として
効力が認められる場合があります。

 

遺言が押印を欠くなど
明らかに無効となる場合でも
諦めずに
死因贈与の主張をしてみましょう。

お問い合わせは

 

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