相続人の経営する会社への貸付は特別受益になるか
公開日:2020/01/06
お父さんは,お兄ちゃんの経営する会社へ金銭を支出したけど
これは特別受益にならないの?
そのような疑問をお感じになっている方
遺産相続,遺産分割でお悩みの方へ
このコラムでは
被相続人が相続人の経営する会社へ
貸付や出資を行った場合
特別受益にならないのか
についてご説明いたします。
特別受益とは?
民法903条1項は
相続人が被相続人から
遺贈又は婚姻・養子縁組のため
若しくは生計の資本として
贈与を受けた者があるときは
これらの贈与を特別受益として
相続財産に持ち戻して
具体的相続分を算定する
と規定しています。
すなわち
生前に贈与を受けた相続人は,
被相続人死亡時に残された遺産の
遺産分割の際に
被相続人の生前に
相続分を既にもらっていたとして
相続分を計算されます。
ですから
特別受益の趣旨は
共同相続人間の公平を維持するため
とされています。
ですので
文字通り
生前に贈与を受けた者は
相続人でなくてはならず
相続人の経営する会社は
法律上は別人格と考えられていますから
被相続人が
相続人の経営する会社に対し
いくら贈与しても
特別受益にはならないのが原則です。
また,
貸付金は
通常返済が予定されていますから
贈与ではなく
特別受益としては
考慮されないのが原則となります。
しかし
東京地方裁判所平成26年4月18日判決は
相続人の経営する会社が受けた貸付・出資について
特別受益を認めました。
どのような場合に
特別受益が認められたのでしょうか。
以下のおいて検討します。
相続人の経営する会社が受けた貸付・出資について特別受益となるための要件
東京地方裁判所平成26年4月18日判決は,
指摘している事情は以下のとおりです。
贈与を受けた会社は
ある特定の相続人の出資により設立された,
当該相続人の実質的一人会社である。
会社名義の土地建物を取得した当時
その会社には資力がなく,
被相続人及び被相続人の妻の管理下にある財産から
土地建物の購入資金や会社の運転資金等を
捻出され
両名からの借入金及び出資金として
会計帳簿に計上した。
もっとも
会社は10年前を最後に
確定申告もしておらず
事実上廃業の状態にあること
被相続人が当該相続人に対する
多額の経済的援助を前提とする遺言や手帳が存在する。
東京地方裁判所は,
このような事情を指摘して
当該相続人が経営する会社に対する
貸付金・出資も
特別受益に該当する
と判断しました。
貸付金であれば
返済されるので,
当然贈与ではなく
特別受益にはなりえないのですが,
実質的一人会社であることに加え,
現在は廃業状態で
返済の可能性がないことから
特別受益に該当するという
例外的な判断がなされたものと思われます。
最後に
以上のとおり
被相続人が
相続人の経営する会社に対し
貸付などをしても
特別受益にはならないのが原則ですが
事情次第で
特別受益になる場合もあります。
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