遺産分割で特別受益者の範囲が問題となる場合
公開日:2019/11/22
亡くなったお父さんは,弟の嫁に生前贈与していた!
亡くなったお父さんは,お兄ちゃんの子どもに生前贈与していた!
亡くなったお父さんが弟の嫁やお兄ちゃんの子どもに
生前贈与していても
特別受益にならないの?
遺産相続で紛争になった方
遺産分割調停になっている方
そのような論点が発生していませんか?
このコラムでは
岡山弁護士会所属の弁護士が
特別受益者の範囲について
ご説明申し上げます!
特別受益者とは?
特別受益者とは
遺産分割や遺留分侵害額請求の際に
特別受益を受けた者として,
生前贈与や遺贈された金額を
遺産として持ち戻すことを要する者
のことです。
要するに
生前贈与や遺贈を受けたのだから,
その分は遺産分割や遺留分侵害額請求の際に
遺産合計額にカウントされてしまう人
のことです。
民法903条1項は,
共同相続人に限定しています。
しかし,共同相続人ってどこまで言うの?
と疑問にお感じになられると思います。
以下では,
結局特別受益者の範囲はどこまで言うの?
という疑問に対するご説明をいたします。
共同相続人とは?
共同相続人とは
文字通り,相続人のことです。
亡くなった方(被相続人)の
配偶者であれ,子であれ,父親母親であれ,兄弟姉妹であれ
相続人になれば
共同相続人として
特別受益者となります。
ですので,
子の子(孫)や子の配偶者などは
共同相続人ではないため
特別受益者とならないのが原則です(例外あり)。
では,
特別受益を受けた子が既に死亡していて
子の子(孫)が相続人となる場合は?
とか
遺産分割の話し合いの最中に
子が死亡して
子の子(孫)があとから相続人となる場合は?
など
どうなるでしょうか?
被代襲者の特別受益
推定相続人(被代襲者)が
被相続人の相続開始前に死亡し,
または
欠格や廃除によって推定相続人の地位を失ったとき
被代襲者に子がいれば
その子(代襲者)が
被代襲者が受けるべきだった相続分を受けて
相続することを
代襲相続といいます。
要するに,
お父さんの遺産分割を考えるときに
お父さんが亡くなる前に
長男が既に死亡していた場合
その長男に子(お父さんから言えば孫)がいれば
孫が長男が相続すべきだった分を相続する
という制度を
代襲相続と言います。
そして,
この場合の長男が「被代襲者」
長男の子(孫)が「代襲相続人」
と言います。
この被代襲者に特別受益があった場合
代襲相続人は被代襲者がもらっていた特別受益を
遺産の価額に持ち戻さなくてはいけないか
という論点があります。
実務では
被代襲者の特別受益は
持ち戻さなくてはいけない
とされています。
代襲相続人
それでは
代襲相続人が特別受益を受けていた場合は
どうなるでしょうか?
代襲相続人が
代襲原因の発生後に
(すなわち,被代襲者の死亡とか
被代襲者の欠格・廃除が発生した後に)
特別受益を受けた場合は
当然持ち戻しになります。
では
代襲原因が発生する前に
特別受益を受けた場合は
どうなるでしょうか。
これは
代襲原因が発生する前の特別受益は
持ち戻しの対象とならないとする説や
相続開始時に共同相続人であれば
受益の時期に関わりなく
受益を持ち戻すべきであるとする説とがあり
定まっていません。
再転相続人
では,再転相続人はどうなるでしょうか。
再転相続人とは
相続が開始してから
共同相続人に相続が開始して
新しく共同相続人の相続人が
相続人になる場合と言います。
すなわち
おじいちゃんが亡くなって
遺産分割の話し合いをしていたら
お父さんが亡くなって
孫がおじいちゃんの相続人になった
という場合の孫のことを言います。
この点
相続人が特別受益を受けていた場合は
再転相続人も受益分を
持ち戻さなくてはいけないのは
当然であると考えられています。
すなわち
お父さんがおじいちゃんから
特別受益を受けていた場合は
孫はお父さんの特別受益分を
持ち戻さなくてはいけないのが
当然とされています。
受贈後に推定相続人となった者
次に
受贈時には推定相続人の地位を有していなかったが,
受贈後に推定相続人になった場合は
どうなるでしょうか。
具体的には
贈与を受けた後で
入籍した場合や養子縁組した場合が想定されます。
この点は
すべて特別受益として持ち戻すべきとする説と
婚姻や養子縁組と関係がある受益か否かで判断するべきとする説と
争いがあり
実務では決着が付いていません。
包括受遺者
この場合は
無条件に持ち戻しを認めるべきとする説と
包括受遺者が共同相続人の場合は持ち戻しを認めるべきだが
共同相続人ではない場合は
持ち戻しを否定するべきとする説で
争いがあり
実務では決着が付いていません。
最後に
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